子どもの嘔吐・原因について
嘔吐とは、食べたものを、意図せず強制的に口から排出されてしまう状態を指します。胃の内容物だけでなく、十二指腸液、胆汁が混じることもあります。
お子さまの場合は、ウイルスによる胃腸炎、胃食道逆流などを主な原因とします。その他、生後すぐの乳児であれば胃の出口の狭小化・閉塞(幽門狭窄)、生後3ヵ月~3歳の乳児であれば腸が部分的に滑り込む(腸重積症)なども疑う必要があります。また、先天的な腸閉塞によって吐き気や嘔吐が引き起こされることもあります。
症状と受診の目安
- 嘔吐+発熱+下痢
- 激しい腹痛+嘔吐
- 咳+嘔吐
- 頭を強打した後の嘔吐
※強打後24時間以内の嘔吐は要注意
受診の目安
以下のような症状があれば、病院を受診しましょう。
- 6時間以上、続けて吐いている
- コーヒーかすのような吐物
- 吐いたものが緑色
- 水分補給ができていない、口内が渇いている
- 汗をかいていない、おしっこが出ない
- 顔色が悪くぐったりしている
- 咳、発熱、発疹を伴う
- 息苦しそう
- 血便(便に血が混ざっている)
- 1週間以内に頭を打っている
- お腹をひどく痛がっている
救急外来の受診が必要な場合
以下のような場合は、救急外来を受診しましょう。
- 吐いたものに血や胆汁(緑色のもの)が混ざっている
- 頭を打ってから24時間以内に嘔吐した
- 嘔吐と下痢を繰り返している
- けいれんを伴い、意識がもうろうとしている
- おしっこが半日以上出ていない
- 唇・舌が渇いている
子どもが吐いたときに注意しておくポイント
お子さまが嘔吐した際は、以下の点を注意深く観察してください。
- 嘔吐の回数(何回繰り返し嘔吐しているのか)
- 頭痛や腹痛、下痢、発熱などがないか
- 食欲はあるか
子どもの嘔吐/嘔吐の繰り返しから考えられる病気
細菌性食中毒
生後5~8ヶ月に多く見られる病気で、黄色ぶどう球菌や病原大腸菌、サルモネラ菌など、様々な菌が原因となって発症する食中毒です。主な症状は嘔吐や腹痛、下痢などで、これらは短時間で生じます。黄色ぶどう球菌による細菌性食中毒の場合は発熱が見られず、それ以外の病原菌によるものは発熱と血便も見られます。
感冒性胃腸炎(嘔吐下痢症)
ウイルス性胃腸炎を起こし、嘔吐・下痢や腹痛などの症状を引き起こします。また時に発熱も伴います。
だいたい6~12時間ほどで症状が治るため、少しずつ水分補給してお腹を休めてあげましょう。主にロタウイルス腸炎やノロウイルスなどが原因菌です。特にロタウイルスの場合、0歳児の赤ちゃんがかかると嘔吐・下痢とともに重度の脱水症状が起こり、入院が必要になるケースもあります。 しかし、赤ちゃんのロタウイルスワクチンが定期接種になったことから、重度の胃腸炎にかかる赤ちゃんはかなり減少しました。
ノロウイルスは感染力が高い割に短時間で治ることが多いです。吐いたものや便などにウイルスが潜んでいるため、きちんと消毒して感染を拡げないようにしましょう。
ウイルス性胃腸炎
ノロウイルス感染症
ノロウイルスへの感染を原因として、嘔吐・下痢の症状が1~3日、持続します。38℃以上の高熱、脱水を合併することもあります。注意が必要なのは、症状が治まってからもウイルスが便中に3週間以上含まれていることがある点です。秋から春、つまり1年を通してほとんどの期間で流行の可能性があります。
お子さまだけでなく、あらゆる年代に感染・発症します。吐物にもウイルスが含まれるため、その処理(片付け)の際の二次感染にも注意が必要です。
ロタウイルス感染症
ロタウイルスへの感染を原因として、嘔吐・下痢の症状が2~7日持続します。白い便、けいれん、脱水などの症状も見られます。ノロウイルス感染症と同様、症状が治まってから3週間が経過しても、便中にウイルスが含まれていることがあります。
腸管アデノウイルス
一年中感染者が出ているウイルスですが、特に夏場が感染のピークです。主な症状は腹痛や嘔吐、下痢、発熱とロタウイルスと似ています。しかし、感染しても目立った症状が現れないこともあります。
乳幼児が感染した場合は、重症化するケースもあるため要注意です 。
腸重積
腸の一部が、腸の別の部分に滑り込んでしまう病気です。このことにより腸の一部が閉塞し、血流が遮断されます。主に、0~2歳くらいのお子さまによく見られます。残念ながら、はっきりとした原因は分かっていません。
突然の腹痛、嘔吐が特徴的な症状です。赤ちゃんの場合は、理由の分からない大泣き、その後のぐったりした感じに注意しなければなりません。またその「大泣き→ぐったり」を繰り返すこともあります。
その他、粘血便、発熱などの症状が見られることもあります。
髄膜炎
細菌、ウイルス、真菌などによって引き起こされる、髄膜とくも膜下腔の炎症のことです。
発熱、低体温、嘔吐、発疹、けいれん、頭痛などの症状が見られます。乳児の場合は、普段と違う機嫌の悪さ(抱っこしたときの異変など)、哺乳不良などにも注意してあげてください。
その他、サルコイドーシス、ベーチェット症候群、脳腫瘍、非ステロイド系抗炎症薬の副作用などによって引き起こされる髄膜炎もあります。
幽門狭窄症
胃の出口、つまり十二指腸とのあいだにある「幽門」という筋肉が厚くなり、胃の内容物の通過を妨げる病気です。生後2~4週間くらいの赤ちゃんによく見られます。
根本的な原因は分かっていません。ただ、遺伝、生後数週間の特定の抗菌薬の使用、妊娠中の喫煙などとの関連性が指摘されています。また、第一子の男児は、そうでない子供と比べ、幽門狭窄症が起こりやすいと言われています。
食欲が旺盛である一方、食後すぐ、まるで噴水のように吐き出すことを繰り返します。脱水、低栄養にも注意しなければなりません。
自家中毒(周期性嘔吐症/アセトン血性嘔吐症)
ウイルスや細菌によるものではありませんが、代謝機能の発達が弱い2歳~10歳のお子さまに起きやすい病気です。体内で脂肪を分解して作られるケトン体が過剰生成されることで、一種の中毒症状を起こします。
脳腫瘍
脳に生じる腫瘍です。はっきりとした原因は未だ分かっていません。15歳未満の小児がんの中で、白血病に次いで多くみられるがんです。
腫瘍が大きくなることで周囲が圧迫され、吐き気・嘔吐、頭痛、気分の変化(怒りっぽくなる、元気がなくなる、錯乱するなど)といった症状が見られます。そのほか、視覚障害、眼球を上に向けられないといった症状を伴うこともあります。
子どもが吐いたときの対処法
体を起こして背中をさすってあげましょう
吐いた後は背中を静かにさすってあげましょう。抱っこするときは縦に抱き、身体を動かさないようにしてください。 車酔いや、かぜによる頭痛で吐いたときは、横になって安静にさせましょう。
吐き気が少し落ち着いてからこまめな水分補給をさせましょう
嘔吐した後に水分補給を行うと、すぐ吐き戻してしまうこともあります。そのため、嘔吐後に吐き気の様子をみて、少しずつ常温の経口補水液やイオン飲料水などを与えてみましょう。(授乳中は母乳・ミルクを薄めず、少しずつ与えてください。) 3時間以上吐かないようでしたら、自由に飲ませてあげましょう。
ご家族にうつらないための感染予防をしましょう
お子さまが発症することで、保護者様にもうつってしまうことが多々あります。ご家庭でできる感染対策を行うことで、家庭内の感染拡大を防ぎましょう。
- 手洗い:排便後や調理や食事の前は石けんで十分に手を洗ってください。
- マスク:手が口につかないよう注意して着用してください。
- 処理時:便・嘔吐物を処理する際、使い捨て手袋やマスクを使用します。処理後は石けんと流水で十分に手を洗ってください。
- 除菌:ハイターなどの次亜塩素酸ナトリウムでウイルスを除菌します。0.1%(500mlのペットボトル1本の水にキャップ゚2杯)に薄め、トイレのドアノブ・手すりなど、色んな人が触れる場所の消毒をしてください。
自己判断で吐き気止めを服用させないようにしましょう
吐き気止めは自己判断で使用しないでください。
吐き気止めを服用させてしまうと、ウイルスの排出を妨げてしまう恐れがあります。
子どもが吐いても食べたがる…嘔吐したときの食事やミルクのあげ方
食事
嘔吐がある場合は、無理に食事させる必要はありません。症状が落ち着いたら、消化の良いうどんやおかゆ、パンなどの穀物や、バナナから食べさせてみることを推奨します。症状が落ち着いても胃腸の機能は完全回復できていない状態なので、食べる量は少量で、少しずつ与えてください。
避けた方がよい食べ物
脂っこい料理や糖分が多く含まれたお菓子、香辛料が多い料理、食物繊維が多く含まれた食品などは、消化に悪いので、避けてください。
ミルクはあげても大丈夫?粉ミルクはどのようにあげる?
母乳は問題ありませんが、嘔吐の直後に飲ませるのはやめましょう。母乳自体は胃腸にいいのですが、一回の飲む量が多くなりがちです。できる限り搾乳して、少量ずつ与えることをおすすめします。