子どもの咳の原因
咳はもともと、気道の分泌物・異物を排除し、感染などを予防するための“生理的な防御機能”として反射的に起こります。分泌物・異物は、飛沫またはたんとして、口から外へと出ていきます。
一方で、呼吸器などの病気、タバコの煙の刺激などによって咳が誘発されることもあります。咳症状が気にるお子さまが受診される場合には、咳以外の症状やその程度、どんなときに咳がひどくなるか・治まるかといったことも、できる限り詳しく医師にお伝えください。
また、子どもの咳の原因は、主に以下の8つと考えられています。
1、呼吸器の感染、炎症 | 鼻咽頭炎、喉頭炎、気管・気管支炎、肺炎、胸膜炎、縦隔炎、副鼻腔炎 |
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2、気道の物理的な刺激 | 唾液・鼻水の流入、圧迫、異物、乾燥、冷気 |
3、胸膜、横隔膜の物理的な刺激 | 胸膜腔貯留液、横隔膜疾患、腹部膨満、胸壁腫瘍 |
4、化学的な刺激 | 喫煙、刺激性ガス、塵埃 |
5、アレルギー性疾患 | 喘息、咽頭浮腫 |
6、心血管系疾患 | 肺浮腫、塞栓、肺高血圧 |
7、神経系疾患 | 反回神経圧迫、外耳道を介する迷走神経刺激 |
8、心因・精神性のもの | 心因性咳嗽、vocal cord dysfunction、過換気症候群 |
このような咳をしていませんか?
「どんな咳が出るか」「咳の音」は診断において、かなり大事な情報です。よく聞く咳の音は以下の通りなので、ご自宅で聞いた咳の音についてお伝えください。また、特徴的な咳が出た際は、動画で記録しお見せいただけますと幸いです。
- 乾いた咳:「コンコン」
- 犬やオットセイの鳴き声に似た咳:「ケンケン」
- 痰が絡むような咳:「ゲホゲホ」
- 喘鳴(ぜいめい):「ヒューヒュー」「ゼーゼー」
咳が続く際の受診の目安
以下の様子が見られましたら、速やかに受診してください。夜間または休日の場合は救急病院や往診へお問い合わせください。
- 咳が激しくて睡眠や食事(赤ちゃんの場合は哺乳)ができない
- 38.5℃以上の熱がある
- 「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった呼吸音がする
- 肩やお腹で呼吸していて息苦しそう
- 水分補給ができない
- 顔色が悪くぐったりしている
夜だけ咳がひどくなる?
夜になると咳が出やすくなるのは以下の理由です。
- 夜は副交感神経が優位になるので、気管支が狭くなりやすくなるため
- 体は温まっていても空気が冷えていると、温度差によってのどや気管支が敏感になりやすくなるため
- 睡眠時は横になるので、鼻水や痰が気管に流れやすくなるため
子どもの咳から考えられる主な病気
風邪
ウイルスや細菌の感染を原因として起こります。
発熱、咳、鼻水・鼻詰まり、頭痛、腹痛、下痢などの症状を伴います。発熱は軽度のものが多く、多くは38.5℃未満です。「コンコン」「ケンケン」といった乾いた咳が特徴的です。
特に小学校に入る前までは、体温調整の機能が発達しきっていないため、頻繁に風邪をひきます。(乳幼児の場合、1年間平均で6~8回、風邪をひきます。)年齢を重ねるにつれて、風邪をひく頻度は少なくなっていきます。
気管支炎・肺炎・胸膜炎
気管や気管支で炎症を起こし、発熱、咳、痰などの症状を伴うのが「気管支炎」です。また気管支炎とほぼ同様の症状をきたし、胸部X線写真で新たな異常陰影が認められる状態が、「肺炎」です。そして、胸膜腔に胸水が溜まり胸膜に炎症を起こしている状態を「胸膜炎」と呼びます。
これら下気道の病気は、上気道の炎症である風邪から進展することがあります。発熱、咳などの症状が、風邪よりもひどくなり、また多くの場合長引きます。
喘息
発作的な気道の狭窄によって、「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」といった喘鳴(ぜんめい)や、呼吸困難を繰り返す病気です。ときに、命にかかわるような呼吸困難に陥ることがあります。
アトピー素因を有していること、アトピー型喘息として発症することが多く認められています。90%以上が、小学校入学前後で発症します。
近年では、タバコの煙、感染などによる非アレルギー性の気道炎症との関連も指摘されています。
マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマという微生物によって引き起こされる肺炎で、軽度の風邪症状や気管支炎、肺炎と様々な症状を引き起こします。感染後に発熱し、その後だんだん咳が強くなっていくという症状が特徴的です。 潜伏期間は1~4週間ほどです。
インフルエンザ
毎年冬になると流行するウイルスで、高熱や鼻水、のどの痛みなど、風邪と似た症状が現れます。
風邪より重い症状が特徴で、筋肉痛や関節痛が起こり全身ぐったりすることも多いです。熱が完全に下がるまで1週間ほどかかり、肺炎や脳症といった合併症リスクもあります。
百日咳
最初はふつうの風邪と変わりませんが、だんだんと咳が多くなり、顔を真っ赤にして激しくせき込むようになります。「コンコン」と連続して咳き込んだのちに、「ヒューヒュー」という呼吸音が続くのが、百日咳“特有の咳”です。
1~2週間目はもっとも咳がひどく、3~4週間目になると少しずつ症状が軽くなっていきます。
百日咳菌、パラ百日咳菌によって引き起こされる感染症で、ワクチンによる予防が可能ですが、4,5歳ごろから効果が落ちてきてかかってしまうことがあります。
7~10日の潜伏期間を経て発症し、特有の咳がなくなる、もしくは抗菌薬による治療を5日間終えるまでは、学校は出席停止の扱いになります。
副鼻腔炎(蓄膿症)
お子さまの副鼻腔炎は、風邪をきっかけとして発症することが多くなります。ダニや花粉などのアレルゲン、アデノイド肥大、口蓋裂、受動喫煙などを原因とすることもあります。2~5歳くらいのお子さまによく見られます。
風邪が長引くような感じで、鼻水、鼻詰まりが続き、これに咳(日中や夜間)や発熱が加わることがあります。日中に元気そうでも夜になると症状が悪化するということがありますので、注意が必要です。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎には、「季節性アレルギー性鼻炎」と「通年性アレルギー性鼻炎」の2種類があります。
「季節性アレルギー性鼻炎」は、花粉が原因で花粉がとぶ時期だけ症状が強くなり、「通年性アレルギー性鼻炎」はハウスダスト(ダニ、カビ、ペットの毛・フケなど)が原因で、その環境で過ごす限りは一年中症状が続くものです。
代表的な症状は鼻水、鼻詰まり、くしゃみです。加えて、咳、目のかゆみ・充血などの症状が見られることもあります。
アレルゲンの回避・除去を優先するべきとされており、治療では「薬物療法」「免疫療法」、重症の場合は手術などが行われます。
子どもの咳が止まらないときの対処法
上体を起こす
夜中に咳がひどくて寝苦しい場合は、腰や背中にクッションを当てて、上体を起こしてあげると楽になります。
部屋を加湿する
空気が乾燥するとのどが刺激され、咳が出やすくなります。濡らしたタオルを部屋に干したり、加湿器を使ったりして、部屋の湿度を「60%以上」に維持しましょう。また、温かい飲み物を飲むなど、のどを潤すのも効果的です。ただし、湿度が高くなるとカビが生えやすくなるので、カビ対策も忘れずに行いましょう。
部屋を清潔にする
アレルギーの有無にかかわらず、ハウスダストは咳の原因となるため、部屋は清潔に保つようにしましょう。
特にホコリやハウスダストが多い寝室はこまめに掃除し、日中に換気を行うようにしてあげましょう。
水や氷を一口飲む
空気の通り道が炎症を起こし咳が出ている場合は、お水を一口飲んだり、氷を1つなめたりすると、楽になることがあります。
周りの大人がタバコをやめる
タバコの煙が原因で咳がひどくなることもあります。喫煙習慣のある保護者様はお子さまのためにも、ぜひ禁煙を始めてみましょう。どうしても喫煙したい場合は、室外で喫煙し、喫煙後45分は別室にいるようにしましょう。