赤ちゃん・子どもの痣の種類
「あざ」は主に、「青あざ」のような、打撲跡として一時的に青紫色に腫れることでできる「青たん・うちみ」と、何もしていないのに生まれつきある、または気付いたら現れていた「アザ・母斑」の2種類に分かれます。
前者の「うちみ」の場合は、皮膚下に溜まった一時的な出血によって生じたものなので、数週間程度で消えていくので問題はありません。しかし、後者の「あざ」の場合は、治療を行わないと消えません。
赤あざ
皮膚の血管が拡張したり、増えたりすることで生じるあざ(アザ)です。赤ちゃんや乳幼児の生まれつきあるアザや、生後に発症するアザ、大きさが変わるアザ、薄くなるアザなど、多岐にわたります。症状も、表面が平らなタイプと、隆起しているタイプなど、それぞれ異なります。
生まれつきの赤あざ
単純性血管腫
生まれたときからある、平らな赤あざです。主に、背中、お腹、首の後ろ、顔、足などに現れます。ワインをこぼしたように見えるため、「ポートワイン血管腫」とも呼ばれます。
子宮の中で皮膚が形成されるとき、真皮の毛細血管が異常に拡張・増殖することを原因とします。生後、身体の成長とともに、赤あざも大きくなります。また、色が濃くなったり、皮膚が分厚くなったりすることもあります。
健康への悪影響はないものの、審美的に気になる場合には、レーザー照射や手術などによる治療が行われます。
サーモンパッチ(サモンパッチ)
サーモンパッチは単純性血管腫の一種で、主に眉間や額、上唇のあたりに生じる赤あざです。指でギュッとつまむと一時的にあざが消えたり、泣いて興奮しているときに一時的にアザが濃くなったりします。
おおよそ1歳半くらいになる頃には、自然に薄くなることが多くなります。
生後現れる赤あざ
乳児血管腫(いちご状血管腫)
皮膚下の毛細血管の異常発達によって、生後4週間以内に、顔、頭、胸、方、手足など赤い斑点が生じ、その後数カ月で大きくなり、いちごのように盛り上がります。1歳頃にピークを迎え、その後は少しずつ色が薄くなっていきます。ただ、血管腫の部位によっては視力障害、聴力障害、開口障害、呼吸困難の原因になることがあるため、その場合は積極的な治療を行います。
治療では、プロプラノロールの内服、レーザー治療などを行います。
青あざ
転んだり、強く打ったりすると、その皮膚の下で内出血が起きます。その時に、青あざができます。青あざは数週間たてばすぐに消えていきます。
赤あざの原因が毛細血管の異常なのに対して、青あざと茶あざ、黒あざは、メラニン色素を生成する色素細胞「メラサイト」が、皮膚の表皮から真皮にかけて多く集まることが原因です。
生まれつきの青あざ
蒙古斑
日本人のほぼ100%の赤ちゃんに見られるお尻・腰まわりに生じる青あざです。生後1ヵ月ほどは特に目立ちます。基本的に治療は必要なく、ほとんどは5~6歳までに消失します。
胎生期の真皮メラノサイトの残存が原因だと考えられています。
異所性蒙古斑
お尻・腰まわり以外の場所に生じる青あざです。蒙古斑と同様、成長とともにあざは薄くなります。ただ、色調が濃い場合は消えずに残ることがあります。
レーザーによる治療が可能です。健康保険が適用されます。
生後、成長と共に現れる青あざ
太田母斑
思春期以降になってから生じる青あざとしてもっともよく知られているのが太田母斑です。ただ、生後すぐの赤ちゃんに現れることもあります。また、男性よりも女性に多く見られます。
基本的に顔の片側、目のまわりや頬、こめかみにかけて生じます。ごく稀に、白目の部分に青あざが生じるケースも見られます。自然に消失することはありません。
レーザー治療による除去が可能です。健康保険が適用されます。
茶あざ
扁平母斑
平らな、カフェオレのような色をしたあざです。多くは生まれつきのものですが、思春期以降に発症することもあります。また思春期以降に発症する場合には、あざと同時に毛が生えてくるケースが散見されます。
通常、悪性化することはありません。ただ、稀にレックリングハウゼン病という重篤な神経線維腫症をきたしていることがあるため、定期的な経過の観察が必要です。
現在、レーザーによる治療が可能です。すぐに再発してしまうような場合は、ドライアイス治療や手術を検討する必要があります。
黒あざ
ほくろ(色素性母斑)
ほくろも、あざの一種で、大きさは通常6ミリ以下です。メラニン色素をつくる「メラサイト」が変性し、大きくなった母斑細胞が、皮膚の奥深くの真皮で増殖することで、黒く見えます。
大きなものは、定期的な観察、また治療が必要になります。治療では、電気やレーザーで焼き切ったり、メスやパンチでくり抜く方法があります。必要に応じて、病理検査を行います。
メラノーマ(悪性黒色腫)
ほくろに似た、悪性度の高い皮膚がんです。10万人に1~2人程度の割合で発症します。特に、30歳以上の方に多く見られます。また、足の裏に発生するケースがもっとも多く、体幹、顔面、爪などに発生するケースがそれに続きます。
メラノーマは、「メラノサイト(色素細胞)」の悪性化によって発生します。ほくろとの区別は難しく、痛みなどの症状が現れるのはかなり進行したものに限られます。
リンパ節転移がない場合には、手術による摘出を行います。一方で、リンパ節転移が認められる場合には、抗がん剤治療、放射線治療などが行われます。
子どもの痣の治療について
お子さまのあざについては、経過観察に留めるもの、積極的な治療が推奨されるもの、見た目が気になるようであれば治療を検討するものと、さまざまなものがあります。
当院を受診後、より精密な検査やレーザー・手術等による治療が必要になった際には、提携する近藤病院の形成外科へと速やかにご紹介いたします。
どうぞ安心してご相談ください。
子どものしこりを伴うあざは
皮膚科・小児科へ
しこりを伴うあざの場合、血管・血小板の異常による紫斑病という病気が疑われることがあります。
あざ、しこりは、“なんとなく放置してしまいがち”な症状です。また近年ではインターネット上にさまざまな情報を手に入れることができますが、「なんとなく」や、不確かな情報のみで判断するのではなく、皮膚科や小児科にご相談されることをおすすめします。
病的なものでなかったり、治療が必要ないものも存在しますが、中には紫斑病のような病気の症状の1つとしてあざ・しこりが生じていることもありますので、気になる症状があるときには、必ず医師の診断を受けるようにしましょう。